孤独死入居者遺品に苦慮 府内公営住宅

公営住宅で孤独死した入居者の遺品をどう扱うか。相続人がいなかったり、引き取りを拒否されたりするケースが大阪府内で増え、管理する自治体が頭を悩ませている。遺品を片付けることができず、10年以上にわたり原状保存されている部屋も目立つ。片付けを迫り、提訴に踏み切る自治体もある。核家族化や家族関係の希薄化で身寄りのない高齢者が増えている現状を浮き彫りにしている。

単身の入居者が亡くなり、遺品が残された公営住宅の部屋=大阪府内

相続人に部屋の片付けを求める文書を郵送しても、返事はない。届かずに送り返されることもある。訪問しても、応答がない。

「どう対応すればいいか…。後でトラブルになってもいけないので、勝手には処分できない」。府の担当者は顔を曇らせる。

引き取り手が見つかるまで、部屋を亡くなった時のままにしている自治体は多い。たんす、テレビ、冷蔵庫…。家族の遺骨や位牌(いはい)、仏壇が残っている場合もある。

遺品の整理には費用がかかり、相続人に負担がのしかかる。

「いまさら言われても困る」「一度も会ったことがない」。府内の自治体を取材すると、ようやく捜し当てても、さまざまな理由で拒否されている実態が浮かぶ。

■15年未返還

府営住宅では、遺品の相続人が見つからない事態が増加傾向だ。明け渡されない住宅は191戸(2015年末時点)で、最長で15年間にわたり未返還のケースもある。

戸籍を調べたり、保証人らへの聞き取りなど、あの手この手で捜す。しかし、時間と労力がかかり、職員の負担も重い。担当者は「素直にたどりつかないことが多い。何カ月も捜す手間を強いられ、他の業務に支障が出かねない」と嘆く。

少子高齢化が本格化することから、処分に困るケースは今後も増えることが予想される。府は今年6月、自治体が簡便に処分できるようなルールをつくるよう国土交通省に要望した。

■行政の役割

低所得者らが対象の公営住宅は、民間と比べて家賃が安い。堺市の市営住宅は応募数が年間2400~2600世帯に上り、入居倍率は20倍超の「狭き門」だ。

市住宅管理課は「部屋を専有されたままでは、市民に申し訳ない。できるだけ速やかに片付けるのが行政の役割」と説明する。

民法では、相続人が不明の場合、利害関係者らの申し立てで家庭裁判所が「相続財産管理人」を選定し、故人の財産を清算すると定めている。

ただ、管理人の報酬を誰がどう負担するかという課題も残る。大阪市は遺品の価値が100万円以上の場合にこの仕組みを活用しているが、公営住宅では資産がほとんどない生活保護受給者も多い。ある自治体の担当者は「コストに見合わない」と慎重な見方だ。

一方、大阪市や堺市は、相続人を相手に、部屋の明け渡しを求める訴訟も起こしている。大阪市では年間5件程度の提起で、敗訴したことはないという。市住宅部管理課は「税金を投入することにもなるが、強い姿勢で臨まなければ解決しない」と話す。

国も対応策検討を

相続問題に詳しい森本志磨子弁護士(大阪弁護士会)の話 自治体が独自の判断で根拠なく遺品を処分するのは問題であり、相続人の所有権を侵す恐れもある。法的に解決するなら、生前に対応することが重要だ。例えば、遺品整理に関する何らかの契約を入居者と交わしておくことも一つの方法。そのためには自治体が身寄りのない高齢者を日頃から把握しておくことが大切であり、それが孤独死の防止にもつながる。国も対応策を検討すべきだ。

 

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